松野先生からの母校探訪

2023 年 4 月から電子情報システム工学科に赴任し、超生物ロボティクス研究室を担当しています松野文俊と申します。教員として関西 3 校、関東 2 校の国立大学を経て、初めて私立大学である、本学に参りました。各大学でカラーがあり、それぞれの文化の違いを楽しんでいます。

私は、学生時代に制御理論、特に偏微分方程式系の制御理論と柔軟宇宙構造物の制御に関する研究をしておりました。教員になってからは宇宙ロボットなどに興味を持って、研究領域を広げてきました。大きな転機は、1995 年 1 月 17 日に発生した阪神淡路大震災でした。一緒に研究していた学生さんが住んでした 2 階建てアパートの 2 階部分が 1 階部分を押しつぶす形で倒壊し、1 階に住んでいた彼は亡くなってしまいました。震災直後、私はエンジニアとしても人としても何もできなかった自分の無力さを感じていました。春を迎え、彼のアパートが取り壊され更地になったころから、私にできることはないだろうかと考えることができ始めました。大規模災害による大きな損失、時間、情報、人など様々なリソース不足を工学の力で補完できないか、少しでも人を助けることに貢献できないかと考えるようになました。同じ思いを持っていた人達と、レスキュー工学という新しい研究分野を立ち上げました。

1996 年 4 月に、私は後ろ髪を引かれる思いで関西を去り、関東の大学に異動しました。関東では、阪神淡路大震災に対する感じ方は全く違っており、このギャップを阪神淡路を経験した私達が埋めなければとも思いました。レスキュー工学の重要性を訴えてきましたが、なかなか認められず悔しい思いをしていました。そんな時、ニューヨークの世界貿易センタービルにハイジャックされた旅客機が突っ込むというテロ 9.11 が発生しました。テロ現場の瓦礫の中から、軍用のロボットがご遺体を発見したというニュースが世界中に流れました。ロボットも災害対応に役に立つのだ、と少し認識が変わりました。その後、文部科学省の大都市大震災軽減化プロジェクトやNEDO戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクトなど大型プロジェクトが立ち上がり、災害対応ロボットの研究開発が実施され、私も PI として参画しました。

そんななか、東日本大震災が日本列島を襲いました。災害は 2 度と同じものは起こらないと言われるように、東日本は阪神淡路とは全く様相が異なる大規模災害となりました。地震・津波・原子力発電所事故が複雑に絡み合った複合災害です。発災後 15 年が経過しましたが、その爪痕は依然として残ったままで、特に福島第一原発の事故は廃炉までの長い長い道のりが待っています。2014 年からは、内閣府の ImPACT タフロボットチャレンジプロジェクトなどの大型プロジェクトが再び立ち上がり、私も PI として参画しヘビ型ロボットの研究開発を実施しましたが、災害対応ロボットの社会実装には至っておりません。

私が、本学に赴任したのと同時に、政府は国の特殊法人福島国際研究教育機構(F-REI)を立ち上げました。この機構は、福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするとともに、我が国の科学技術力・産業競争力の強化を牽引し、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」となることを目指しています。私も F-REI のロボット分野の副分野長として、過酷環境ロボティクスという新しい研究分野を掲げて、宇宙や災害現場などの過酷な環研究開発を担う組織の立ち上げを行っております。一方、本学でも、過酷環境を対象とした、宇宙ものづくりセンターや災害対応研究センターの設立が予定されており、今後の進展が期待されます。

さて、私の研究室では、「生物から学び生物を超えるロボットを創る」をスローガンに掲げ、宇宙や災害現場などの過酷環境での適用を視野に入れた研究開発を行っています。具体的には、災害現場で情報を収集し軽作業を行うクローラ型陸上ロボット、瓦礫などの狭い空間に入っていくヘビ型ロボット、一台の機能は高くはないが群れとして集まったときに知的な機能を生み出す群ロボット、直感的なロボットの遠隔操作を可能とするユーザーインタフェース等を研究開発しています。2022 年度から 2025 年度まで、国の大型プロジェクト Moonshot の「月面探査/拠点構築のための自己再生型 AI ロボット」の研究課題「モジュラーロボットの設計、動作・機能解析」の PI としてモジュラーロボットの研究開発を実施しました。

最近では、研究室の学生さん(イタリアのトリノ工科大からの 2 名の留学生を含む)で構成されたレスキューロボット開発チーム SHINOBI が、2026 年 7 月に韓国で開催された世界的なロボット競技会の RoboCup2026 世界大会レスキューロボット実機リーグで、世界各国の 22 チームと競い合い、準優勝を果たしました。加えて、Best in mechatronic dexterity および Best in autonomous dexterity を受賞しました。また、我々の研究室の活動内容は、広くマスメディアでも紹介されており、今年だけでも関西テレビ「よ〜いドン!」が研究室を訪れ、私が「となりの人間国宝」に認定されました。また、NHK ワールドの「BOSAI:Science that Can Save Your Life」においても、研究室の取り組みが紹介されました。

以上のように、常に社会貢献を考えながら、インパクトのある研究開発を学生さんとともに進めています。詳細は以下の研究室 HP をご覧ください。

大阪工業大学 超生物ロボティクス研究室