H10年卒 吉田 誠
このたびOB短信を書かせていただくということで、これまでの自身の振り返りやこれからの目標を再び点検するタイミングをいただいたようで本当にありがたいです。駄文ではありますがどなたかのお役に立てましたら幸いです。
私は現在、社会人として働きつつ奈良先端科学技術大学院大学の先端科学技術研究科博士後期課程で学んでいる社会人20数年越えの学生です。
技術者としてのこれまでの取り組みや、なぜ今大学院に通っているのかなど含め報告させていただければと思います。
大学を卒業してからは、アナログ回路設計や高周波回路設計を主にやってきました。技術者として非常に恵まれたのは、当時あちこちのセミナーや講演会を聞きに行く機会をいただけたので第一線で活躍するその道の第一人者の方々とたくさん交流できたことです。
今でも年賀状のやり取りや食事など交流が続いています。その時感じたのは一流の技術者の方の多くは非常に腰が低くこちらが恐縮してしまうほど謙虚な方が多いということでした。また、好奇心もとても旺盛な方が多いように思います。
ある技術者の方とお話ししていますと「こんなことしてみたらどうだろうか」などアイデアがつぎつぎと出て「面白い面白い」とお話を伺いながら、その源は何かなとふと思いつつ伺ってみますと、専門分野に限らず、めずらしい技術や面白い発想のある技術など常に貪欲にアンテナを張っておられ、いったん抽象化して自身の分野との共通項や使える要素はないかなど考えておられるようです。
また、講演を聞いてとてもわかりやすく解説された別の技術者ですが、この方にゆっくりお話を伺ってみますと専門知識についても深く考察される時間を持たれているように感じました。講演のたとえ話などがとても分かりやすいのも色々な目線からの観察力のためなんだなと感じました。
恵まれた出会いの中、私もこんな技術者になりたいなと背中を見させていただき、アンテナを張るように心がけるのが日課になりました。先輩技術者からしたら、「まだまだ」かもしれませんが、引き続き精進しているところです。
このような前向きな方が近くにいていただいたおかげか、一念発起して電気電子部門の技術士の試験を受け2014年には資格を取得、回路の世界ではいくつか特許も取らせていただくことができ非常に充実した技術者生活でしたが、もう1歩達成したい目標がありました。それは小学校からの夢であった博士号を取ることです。
しかしいつ通うのか・・・いったん社会人を引退して大学院にとも考えましたが生活面の維持も必要ですのでいろいろと考えていたところ、会社の共同研究先の大学で社会人ドクターという道があることを知りました。
そここで人生で久しぶりの入学試験を受け2020年に合格し、入学するときにはガイダンスもあり学生時代に戻った気分を味わいました。早いものでそれから1年たち現在博士課程2年生ですが、妻や家族に協力してもらいながら研究に、論文作成にと主に土日を使って進めています。
研究内容はAIのためのセンサー回路などで、AIが識別しやすい特徴量をいかににセンサー側で持たせるかこれまで取れなかった事象をセンシングするにはどうしたらよいかなどです。回路とソフトウェアの間のような研究で回路設計とソフトウェアのコーディングと両方行っています。
ところで趣味では回路好きからこうじて半導体にも興味があるためこちらは独学ですがS・M.Szeの半導体デバイスの本や量子力学の勉強を改めて少しずつ進めていたのですがなんと入学した先端研究科は半導体をやっている学科も含まれているため、半導体の講義を聴講することもできるようでリフレッシュがてら、ものすごく得した気分で聴講もしています。ちょうどコロナ渦の影響もあり在宅で見ることもできる講義も多いため助かっています。
そんな学生生活は若い学生とも仲良くさせてもらい、幾分歳が若返ったような気になりましたが喜んでいるのもつかの間、大きな壁が待っていました。授業は博士後期課程ということでほとんどありませんが、英語が基本となっており大学時代も英語は苦手だったので非常に焦りました。今どきの英語アプリやYoutubeを活用して英語の特訓をし、なんとか「聞く」「話す」を少しずつできるようになってきたくらいのレベルです。
専門性のある英語は読み取り易き聴きやすいですので何とかなりますが、やはり語学はしっかり身に着けておかないとと実感しています。
いろいろと課題が多い学生生活ですが先日、情報処理学会の山下記念研究賞という賞をいただくことができました。本年3月受賞式もあるようで参加させていただこうと思っています。
卒業までにはまだまだ研究成果を積まないといけませんが、家族に感謝しつつ仕事と学業と家庭の両立に励み、いつか会った先輩技術者の様になれるよう貪欲に技術一直線で取り組んでいきたいと思います。
最後にこのような報告の機会をいただきありがとうございました。