H19年 (2007年)卒のOB短信

橋本貴史(Takahito Hashimoto)

ローム株式会社 http://www.rohm.co.jp/web/japan/
LSI生産本部 生産担当 LSI製造部
LSI技術担当 立体加工 プロセス課 薄膜グループ

2007年 工学部電子情報通信工学科卒業
2009年 工学研究科電子電気工学専攻博士前期課程 修了

≪ハードウエアづくりを学ぶために大阪工業大学へ≫

私は、カスタム LSI 大手のローム株式会社で、LSI のIT産業技術の開発を担当しています。「ローム株式会社」の製品としての名前はあまり知られていませんが、JR 京都駅の照明や新型プリウスをはじめ、多くの製品にはロームの電子部品が使われています。ご利用されるお客様の顔が見えるのは製造業の面白さであり、やりがいを感じています。

≪講義で興昧を持ち半導体の世界へ≫

私が大阪工業大学への進学を決めたのは、コンピュータのハードウエアを専門に研究されている先生のもとで、その技術を学びたいと思ったからです。しかし、小池一歩先生の「基礎電子回路」の講義で、半導体の最新技術について教わったことをきっかけに半導体に興味を持つようになりました。特に透明な半導体に関する話は印象的で、授業後は先生の研究室にお邪魔して、半導体について教えていただくようになりました。卒業研究では小池先生の「新機能デバイス研突室」に所属し、半導体による電子部品「透明トランジスタ」の研究に没頭しました。完成品は非常に性能が高く、当時、世界トップクラスの性能を記録しました。このような成果を挙げられたことはとてもうれしく、学生時代の思い出に残る研究となりまし
た。

≪材料を選び、より安価な青色 LED の開発に着手≫

大学院では、ナノ材料マイクロデハイス研究センター(ナノ材研)に入り、さまざまな経験をしました。私がナノ材研に入った頃は、大阪工業大学が「ハイテク・リサーチ・センター」という国のプロジェクトに選定され、センターを一新するタイミングでした。どのような装置を新設するかはセンター内の各グループに任されていたので、私は X線で材料を測定する装置を設置し、ほかの研究室の学生が持ち込む電気・電子サンプルの測定をしながら測定技術を磨きました。また、機械工学科の上辻靖智先生の研究にも携わり、著名な先生方が出席される学会で発表する機会も多くいただきました。そんな多忙な研究生活の中で私がメインに取り組んだのは、青色発光ダイオード(LED) をつくる研究です。現在、世の中で使われている青色 LED より安価につくるために、酸化亜鉛を材料に研究をス
タートしました。この研究は、当時大阪工業大学では始まったばかりだったので、一から取り組むことが面白く、やりがいを感じました。毎日朝から深夜まで研究を続けていましたが、青色 LEDを発光させる段階までは到達できませんでした。しかし、研究成果をまとめ大学院の修士学位論文発表会では論文賞をいただき、苦労が報われました。

≪自由化研究に打ち込んだ大学院時代の経験を生かす≫

大学院修了後、ローム株式会社を就職先に決めたのは、先輩方から「入社1年目からいろいろな仕事を任せてもらえる」と聞き、魅力を感じたからです。実際、私も1年目から自分で計画を立て、開発に取り組みました。LSI製造の効率化を考えた時は、これまで使用していた国産材料を見直し、国外産材料が適用できるかどうかを評価し、大幅なコストダウンに成功しました。このような仕事を最初から戸惑うことなくこなすことができたのは、ナノ材研で計画を立てて結果を解析・評価し、先生に報告するという、会社と同じ流れで研究をしていたからだと感じています。社会に出て改めて思うのは、大阪工業大学では、社会で通用する力を知らず知らずのうちに身に付けることができ、また、他大学出身者の話を聞くと、大阪工業大学ほど研究環境に恵まれた大学はないと実感します。大学院では、自分で実験テーマを立案し、材料を買って装置をつくったこともあります。失敗することも多くありましたが、そんな環境だったからこそ、意欲を絶やすことなく研究に打ち込めたのだと思います。

(2016.9.8作成)